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ゴドリス、一枚の写真

発売から半年経っても売れ行き好調の写真集「GODLIS STREET」。ゴドリスのストリート写真の集大成であるこの写真集、ゴドリスが撮影した街中の人々は、言ってみれば「赤の他人」で、どういう人達がどのような経緯で写真に納まったのかを想像するのも楽しみ方の一つです。

しかし中には、インスタグラムや写真集で写真を公開したことで、ゴドリスが後からその被写体の事を知ることになったケースがいくつもあるそうです。

この写真もそんな一枚。

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1982年のとある朝、ゴドリスの家からすぐの角にあるコーヒーショップで撮影されたこの一枚。
いつものコーヒーショップを通り過ぎる時にこのカップルが目に入り、
「きっと夜更かしして、今頃朝ごはんなんだろな」
と、ゴドリスは思わずシャッターを切ったそうです。

そしてその数年後、レストランでこの写真を展示していたところ、ゴドリスの手元に手紙が届きます。

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手紙は写真に写っている女性からで、偶然レストランで展示されていたこの写真を見た、是非購入したい、とありました。
この時彼女は英国在住で大学を卒業したばかり、写真が撮影された時、彼女とボーイフレンドは大喧嘩の真っ最中だった、と判りました。
ゴドリスは彼女に写真を送ることにしました。

昨年、「GODLIS STREET」の編纂をしている時に、ゴドリスはこの写真の彼女の事がふと気になり、手紙にあった名前を元にネットで検索してみました。
すると彼女はニューヨークに戻ってきていて、彼女の母校でもあるニューヨーク市内の芸術学校の先生になっていたのです。

ゴドリスは彼女のウエブサイトを通じ連絡を取りました。まだその時点ではストリート写真集を編纂している途中だったので、とりあえず最初の写真集「HISTORY IS MADE AT NIGHT」を贈ることにしました。

そしてこの2月、彼女たちの写真が載った「GODLIS STREET」をプレゼントしようと再度連絡を取ります。

ところが、今回は彼女の家族から返信があり、彼女は若くしてこの1月にお亡くなりになっていたのを知ったのです。

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ゴドリスは、彼女と親しくなることはなかったものの、彼女の写真を撮影したことで、40年来の知り合いみたいに思えていた、と語っています。

残念に思いながら、この写真と彼女の話をインスタグラムで公開すると、彼女のことを知る人たちから続々コメントが寄せられました。

「彼女の写真、そして経緯を公開してくれてありがとう!」
「彼女の作品も観てあげて!」
「素敵な話だ、そんな素敵な関係に敬意を表したくなる」
「Benitaを知る他の人たちにも教えてみます!」

実は彼女、Benita Raphanは、映像作家としても知られ2019年にはグッゲンハイム財団から芸術家育成助成金を受賞。
彼女が作った「詩的で夢のような」と評される短編映画には多くのファンがいたのです。

そしてゴドリスがこのエピソードをインスタグラムで公開したことで、更に多くの人が彼女や彼女の作品を知ることになりました。

たった一枚の写真が切っ掛けとなった、まるで映画みたいな話ですね!